2007年8月24日金曜日

民衆の語る文革

 20日から23日まで、NHK総合で「民衆が語る中国・激動の時代~文化大革命を乗り越えて」を放映していた。
 文革については多くの本が出ているし、ドキュメンタリー番組もすくなからず製作されてきた。この番組は文革にかかわった、あるいは巻きこまれた40人以上の中国人に長時間のインタビューをおこない編集したもので、渦中にいた民衆みずからが語った点が新鮮である。40年たって、ようやくこういう番組が作れるようになったということだろう。
 第1回は文革の発動から高揚期、第2回は激化する武闘と林彪事件、第3回は下放政策、第4回は文革の終焉がテーマだった。
 最初の2回はみな妙に楽しそうに思い出を語っていた。元紅衛兵がなつかしむのはわかるが、被害にあった人まで熱っぽく語るのだ。ひどい話がたくさん語られたが、それでも彼らにとっては青春だったということだろう。
 ところが第3回で下放の話になると、みな一様に口調が重くなり、表情が曇る。文革の熱狂は一過性だったが、下放は都市戸籍を失うことであり、その後の一生を決定したからだ。
 最初は幹部の子供も平等に下放されていたが、文革が一段落するとすぐに都市にもどれた。しかし、コネがないと地方に埋もれることになった。出身が悪いと、いくら頑張って村で推薦されても、都市にもどるのは不可能だったという。多くの人にとって、下放は終わっていない。
 意外だったのは林彪事件の評価だ。毛主席の「もっとも忠実な戦友」にして後継者が、一夜にして売国奴になったという異常事態を国民に納得させるために、林彪直筆の「五七一工程」に関するメモを公開したが、そこに書かれている毛沢東批判と文革批判を読み、本当のことが書いてあると直感したと異口同音に語っていた。自分の頭で考えはじめるきっかけになったと証言する人が何人もいた。表向きは「批林批孔」を叫んでいても、本心は別だったわけだ。