「レ・ミゼラブル」
日本初演から20年目をむかえた公演で、キャストが一新している。この作品を見るのは7回目か8回目だと思うが、新キャストでははじめてだ。パンフレットは今回のキャストを紹介した赤版と、20年間を回顧した青版の二種類出ていた。
男性陣は全般にすぐれている。今井清隆のジャン・バルジャンは滝田栄に似たタイプ。歌は滝田より聞かせるが、アクがやや不足。
石川禅のジャベールははじめて見るタイプで、歌がうまいが、サラリーマン刑事という感じで怖さが足りない。ジャベールは怪物でいてくれないと困る。
泉見洋平のマリウスは多分、最高のマリウス。仲間を偲ぶ歌は絶唱。線が細いかと思ったが、マリウスはもともと線の細い役であり、これでいいのだ。他の学生たちもすばらしく、乾杯の歌はぞくぞくした。ガブロシュもよかった。
徳井優のテナルディエは期待したが、歌がお粗末。他がうまいだけに、余計下手に聞こえた。
女性陣はふるわない。山崎直子のファンテーヌは陰気すぎるし、声が伸びない。坂本真綾のエポニーヌは不安定。コゼットの辛島小恵はオペラ出身らしいが、台詞と歌のつなぎ目が変。たまたまひどい日に当たったか。
女性で唯一よかったのがテナルディエ夫人の森公美子。多分、最強のテナルディエ夫人で、鳳蘭よりいいかもしれない。
夏休みなので子供連れが多かったが、おとなしく聞いていた。
なお、「レ・ミゼラブル」ファンなら、ハイライト版でかまわないから、英語の歌詞を聞いておくことをお勧めする。もともと英語をのせるために作曲された曲なので、子音の響きがメロディーに消えていくところなど、日本語の歌詞からは想像ができないくらい繊細で甘美なのである。