「ボビー」
ロバート・ケネディが暗殺された1968年6月5日のアンバサター・ホテルの一日を描いた、文字どおりグランド・ホテル形式の作品。
宿泊客、ホテルスタッフ、元従業員、出演している歌手、選挙運動員など22人が登場する。ホテルの裏方が多いが、理由は最後にわかる。彼らは暗殺現場にいあわせた実在の人物をモデルにしているのだ。ロバート・ケネディは選挙本部で勝利を宣言した後、厨房を抜けて外に出ようとした時に暗殺された。厨房が現場なので、ホテルの裏方が多くなったのである。
引退したドアマンにアンソニー・ホプキンス、アル中の歌手にデミ・ムーア、そのヒモ兼マネージャーにエミリオ・エステヴェス、ベトナム行きを逃れるために偽装結婚する青年にイライジャ・ウッド、支配人の愛人兼電話交換手にヘザー・グレアム、その他、シャロン・ストーン、ヘレン・ハントといった大所が出演しているが、日本の映画にありがちのにぎやかしではなく、本人とはわからないメークで登場し、本格的な芝居をしている。
ロバート・ケネディを今とりあげたのはイラク戦争のためだろう。ロバート・ケネディは泥沼のベトナム戦争に終止符を打ってくれるヒーローとして待望された。ロバート・ケネディが大統領になったとしても、ベトナムからニクソンより早く撤退できたかどうかは疑問だ。暗殺場面にかぶせて最期の演説が思いいれたっぷりに流れるが、わたしにはピンと来なかった。