2007年8月14日火曜日

「パルマ派展」

 国立西洋美術館で「パルマ ―イタリア美術、もう一つの都」展を見たが、あまりおもしろくなかった。大きな宗教画が多く、いかにも泰西名画といった絵ばかりだった。美術史的には意義があるのだろうが、好みではなかった。
 むしろ常設展の方がおもしろかった。「パルマ派」展で展示されていたのは15世紀から18世紀にかけての宗教画だったが、その前の時期、中世後期から14世紀にかけての宗教画の小品が最初にならべられていた。保存状態はきわめてよく、テンペラ画のあまりにもあざやかな色彩に驚いた。松方コレクションは奥が深い。
 「パルマ派」展と常設展には聖ベロニカの聖画が何点もあった。聖ベロニカは十字架を担って刑場まで追い立てられたイエスの顔を布で拭ったとされる女性で、布にはイエスの顔が魚拓のように写ったという伝説が残っている。これが「ベロニカの聖帛」で、中世ではもっとも人気のある聖遺物の一つだった。
 聖ベロニカは「聖帛」の縁で洗濯女と亜麻布商人の守護聖人だったが、写真術が発明されると写真師の守護聖人になった。
 キェシロフスキーの「ふたりのベロニカ」のヒロインがベロニカと名づけられたのは聖ベロニカの故事と関係があるのかもしれない。