2007年8月18日土曜日

「五木寛之 21世紀・仏教への旅」日本・アメリカ編

 「仏教への旅」最終回は五木寛之が近年関心をもっている他力の思想がテーマだった。
 五木は他力という観点から半生をふりかえった『他力』を1998年に出版したが、この本は "Tariki" として英訳され、ニューヨークではベストセラーリストにはいるほどの売行を見せたという。
 他力の思想をアメリカ人に問いかけるのが今回の趣旨だが、結果はすれ違いに終わった。日本の武道を教えているオヤジが "Tariki" に感動したと熱っぽく語っていたが、あれはどう見ても日本ヲタクの一方的な思いいれだ。9.11の遺族で、イラク戦争に反対しているお婆さんが出てきたが、自分の活動の範囲でしか語っていなかった。
 チベット仏教の権威のロバート・サーマン氏も登場したが、他力思想は知識として知っているだけで、特に関心をもっているわけではなかった。
 番組では触れていなかったが、彼は女優のユマ・サーマンの父親である。ユマ・サーマンは子供時代にヒッピーの父親にひっぱりまわされてインドを放浪したとインタビューでこぼしていたが、そのヒッピーの父親がロバート・サーマン氏なのである。"Inner Revolution" などチベット仏教関係の著書が多数あり、"The Jewel Tree of Tibet" という講義のCDも出ている。
 "Tariki" を読んだキリスト教の説経師が五木に、生きようという意志があったから、敗戦の混乱の中で生きのびることができたのだろうと反論していたが、あれがアメリカ人の本音だろう。最後にアメリカで成功した禅僧が登場し、自力と他力は一致すると語っていたが、アメリカ人にはそこまではわからないのではないか。
 アメリカは努力をよしとする文化なので、禅やチベット密教のような厳しい修行をともなう仏教は受けいれられやすいが、他力の思想は一番受けいれられにくいのではないかと思う。エイズで死にかけている人とか、罪を認めている死刑囚とか、努力が無意味になった人に問いかければ別かもしれないが、相手を間違えている。