「自虐の詩」
業田良家の漫画を堤幸彦が映画化。「自虐」は「あい」とも読む。
非現実的なくらい不幸な女性を中谷美紀がまたもコミカルに演じていて、『嫌われ松子の一生』と完全にかぶっている。中谷美紀はマゾなのかと疑いたくなるが、映画としてはこちらの方が格段におもしろい。堤幸彦作品の中でも一番いい(というか、はじめておもしろいと思った)。
物語は幸江の中校時代からはじまる。幸江は貧しい家計を助けるために新聞配達をしていたが、家にもどってみると警察の車が。父親(西田敏行)がまぬけな銀行強盗をやって逮捕されたのだ。犯罪者の娘になってしまった幸江は気仙沼にいられなくなり、唯一の親友である熊本さんに見送られて上京する。
十数年後、幸江は元ヤクザのイサオ(阿部寛)と、大阪の通天閣の見える下町で暮らしている。イサオはパチンコ三昧で働かず、気にいらないことがあるとすぐに卓袱台をひっくりかえす。幸江はラーメン屋でアルバイトをして、ひたすらイサオに尽くしている。
どん底話と平行してイサオとのなれそめが語られるが、どちらも予想通りのベタな話である。意外性はまったくないが、それでもおもしろいのは中谷美紀の不器用さというか社会との異和感が画面ににじみでているからだと思う。彼女は柴咲コウとよく間違えられるそうだが、柴咲コウがこの役をやったらウソになってしまう。この映画は中谷美紀だからこそ成立している。
DVDは来年3月発売だが、中谷美紀の撮影日記とナビゲートDVDが出ている。