2007年10月25日木曜日

情報通信法、官の言い分

 ICPFセミナー「通信・放送の総合的な法体系を目指して」を聴講してきた。講師は情報通信法を担当する総務省情報通信政策局総合政策課長の鈴木茂樹氏で、やる気むんむんというか、50年に一度の大改革を手がける喜びに舞いあがっている印象を受けた。制度をゼロから設計する機会にめぐりあえたのは役人冥利に尽きるといったところか。
 鈴木氏は情報通信法はあくまでもIT産業振興のための規制緩和であり、新たな規制でしばろうとするものではないと熱弁をふるった。レイヤー型法体系という世界最先端の法体系を整備することで日本のIT産業が復活すれば、他の国も日本に倣うようになり、いち早くレイヤー型法体系に慣れた日本企業の国際競争力が高まるとも説いていた。ほとんど新制度のセールスマンである。
 講演の部分はどこかで読んだような話ばかりで新味はなかったが、質疑応答はおもしろかった。
 まず、資料中の怪しげな数字に突っこみがはいった。鈴木氏の講演は日本のIT産業に対する危機感を煽り、その処方箋として情報通信法を持ちだすという趣向になっているので、資料にはセールストークというか、素人だましの数字がまじっているのである。今回配布された資料は他の機会でも使われてきたと思われるが、具体的な指摘に鈴木氏はあわてていた。
 こんなドラスティックな改革が本当にできるのかと先行を疑問視する声も出た。講演では各界から寄せられたパブリック・コメントの傾向が紹介されていたが、中でも放送界は警戒感を隠さず、断固反対の構えのようである。鈴木氏は放送界について、地方局は遠からずやっていけなくなるという意味の見通しを語った。県域免許制の矛盾は多くの人が指摘しているが、総務省の担当者自身が婉曲ながら、地方局の自滅の可能性に触れた意味は重い。
 コンテンツ規制や著作権については情報通信法の範囲外といわんばかりの答えをしていた。
 情報通信法は産業政策だとしきりに強調していたが、では遅れた法体系で動いているアメリカがなぜ強いのか。レイヤー型法体系に変えて、本当に産業振興になるのか。その辺りの明確な答えはなかった。