2007年10月2日火曜日

「ラスト・キング・オブ・スコットランド」

 最悪の独裁者といわれたウガンダのアミン大統領を、はからずも側近になってしまった若いスコットランド人医師の視点から描く。原作はジャイルズ・フォーデンの『スコットランドの黒い王様』。
 エジンバラ大医学部を卒業したニコラス・ギャリガンは冒険心からアフリカの診療所に赴任するが、クーデタを起こして大統領に就任したばかりのアミンが村にやってきて知りあったことから、とんとん拍子に主治医にとりたてられる。アミンは英国嫌いだったが、ギャリガンが英国に抵抗したスコットランドの出身だったことが気にいられた理由らしい。
 フォレスト・ウィテカー演じるアミンは陽気で騒々しく、周囲を熱狂に巻きこみ、現実の大統領というよりカーニバルの阿呆王という印象である。ウィテカーの怪演は評判通りだが、アフリカではこういう人物でないと大統領になれないのだろうか。
 ギャリガンはジャングル暮しをやめて首都の豪邸に移り、得意満面の日々を送るが、しだいにアミン政権の裏面を知るようになる。
 始末の悪いことに、彼はアミンの夫人の一人に同情するうちに恋仲になってしまう。
 不倫がばれたギャリガンは脱出を試みるが、時すでに遅く、絶体絶命のピンチに。最後の最後にエンテベ事件を持ってきたのは上手い。
 ギャリガンは架空の人物だが、『金正日の料理人』を読んでいたので、こんな若者がいても不思議はないと思った。北朝鮮が崩壊したら、金正日を主人公にして同じような作品が作れるだろう。