2007年10月18日木曜日

「ハンニバル・ライジング」

 ハンニバル・レクター博士の生い立ちにさかのぼった、いわば「羊たちの沈黙」エピソード1。日本の鎧兜の出てくる予告編で悪い予感がしていたが、本篇は目を覆いたくなるお粗末さだった。
 ハンニバルはリトアニアにレクター城をかまえる大貴族レクター家の御曹司だったが、両親を爆撃で失い、妹を飢えた逃亡兵のグループに食われ、リトアニアがソ連領になってからはかつてのレクター城を改造した寄宿舎でいじめぬかれる。ハンニバルは寄宿舎を脱出し、フランスのレクター家の分家に頼っていく。
 分家の当主はすでに他界していたが、日本から嫁いできたレディ・ムラサキという若い未亡人(なぜか鞏俐)にあたたかく迎えられ、パリで医学を勉強することになる。
 レディ・ムラサキは大名家の生まれで、日本から刀剣や能面、鎧兜などをもって嫁に来ているらしく、夥しい日本の美術品がおどろおどろしく映しだされる。しかも、念のいったことに彼女の両親は原爆で死んでいる。
 成人したハンニバルは妹を食べた逃亡兵たちが国際ギャングのようなことをしていることを知り、復讐を誓う。一人一人探しだしては日本刀で首を刎ねていくのだが、悪の化身だったはずのハンニバルが勧善懲悪のヒーローになってしまっている。
 傑作『羊たちの沈黙』に泥を塗るような作品だが、なんとエド・ハリスの原作に忠実らしいのである。エド・ハリスはここまで駄目になっていたのか。