2007年10月10日水曜日

「荒馬と女」

 マリリン・モンローとクラーク・ゲーブルの最後の映画である。原作はアーサー・ミラーの短編 "The Misfits"で、「不適格者」とか「はみだし者」と訳されている。映画も原作の題名をそのまま使っており、邦題とはまったく印象が異なる。
 映画製作当時、ミラーとモンローの結婚生活は破綻しており、離婚は秒読みだったが、ミラーはモンローのためにロズリンという役を書き加えてやったという。
 舞台は6週間滞在すれば離婚が認められるネバダ州のリノで、ロズリン(モンロー)は離婚のために町にやって来ている。
 めでたく離婚が成立した日、離婚コーディネーターのイザベルに誘われて酒場にいき、野生馬狩りで生計を立てているゲイ(ゲイブル)と流れ者のパース(クリフト)、元爆撃機のパイロットで自動車修理工のギド(ウォラック)と意気投合する。
 ロズリンは西部の生活にあこがれをいだくが、パースの出場したロデオを見てショックを受ける。ふりおとされ、脳震盪でふらついているのに、まだ出場するというのだ。周囲の人間もそれを当然と考えている。ロズリンにはまったく理解できない。
 自由な生活の実情もだんだん見えてくる。ゲイは時代錯誤のカウボーイだし、パースは牧場を継ぐはずだったのに継母に追いだされたことを愚痴っている。ギドは爆撃で無辜の市民の殺戮に手を汚したことを悔やんでいる。
 翌朝、野生馬狩りがはじまると、ロズリンはさらにショックを受ける。ギドがオンボロ飛行機で野生馬の群れを追いたて、待ち構えていたゲイとパースが投縄でとらえるのだが、つかまえた野生馬はかつては乗馬としての需要があったが、今はドッグフードの原料にしかならないというのだ。ロズリンは脚をロープで縛られ、地面でもがく馬を見てパニックを起こす。パースは見るに見かねて、ロズリンのために野生馬を解放してやる。
 面目丸つぶれのゲイは最後に意地を示す。徒手空拳、野生馬のリーダーと格闘してとりおさえる。これで救われた。
 それまでは陰々滅々な展開で、途中で席を立ちたくなった。DVDだったら見るのをやめていただろう。二本立ての一本目だったので、我慢して最後まで見たが、最後まで見通すと感動していた。ゲイは最後にプライドをとりもどした。ゲイを演じたクラーク・ゲーブルはクランクアップの四日後に急死したということだが、それだけの鬼気迫る名演だった。
 ギリシャ悲劇などもそうだが、真のカタルシスにいたるには不快に耐えなければならない。昨今のマーケティング主導の映画作りでは無理だが。