2007年10月24日水曜日

「ボッスン・ナップ」

 黒人英語で娼婦の元締のことを「ピンプ」というが、そのピンプの一代記である。主演のスヌープ・ドッグはラップ界のスーパースターだそうである。ラップはまったくわからないが、この映画はおもしろい。
 コーデー(ドッグ)はしがないスーパーの店員だったが、なぜか女にはもてた。ある日、オレンジ・ジュース(ホーソーン・ジェームズ)という高名なピンプが豪華なリムジンを乗りつけてきてコーデーを招ききれ、お前にはピンプの才能がある、これはという女を見つけたら力になってやってもいいと申しでる。
 コーデーはシャルドネ(シラエ・アンダーソン)という上玉の女と出会い、ピンプになる決心をする。オレンジ・ジュースの教えを忠実に守り、かかえる娼婦をどんどん増やして業界の注目を集め、ピンプの全米大会でその年の最優秀ピンプに選ばれるまでになる。
 成功とともに慢心が生まれる。女に本気で惚れるなというオレンジ・ジュースの教えを破り、シャルドネと結婚を決意したのだ。二人で街を出ようと矢先、悲劇が起こる。かつてコーデーに娼婦を奪われたピンプがシャルドネを刺し殺したのだ。コーデーはシャルドネの仇をとり、殺人罪で下獄する。獄中で歌う悲しみと悔恨の歌は泣かせる。
 コーデーと喧嘩別れしたオレンジ・ジュースは腑抜けのようになって出所してきた彼をあたたかくむかえる。コーデーは再びピンプ稼業をはじめ、オレンジ・ジュースの片腕となって後進を指導する立場になる。
 オレンジ・ジュース役のジェームズはピンプ界のヨーダという貫禄で、かっこいい。ピンプ道なんてあるはずもないが、あるかのように大真面目に作っているところが笑える。
 黒人しか出てこない映画で、全編ブラック・ミュージックが横溢している。ゴージャスさと安っぽさがいりまじり、ギトギトに脂っこくて最初は戸惑ったが、すぐに引きこまれた。愛すべき小品といえよう。