2007年7月20日金曜日

「トリノ、24時からの恋人たち」

 トリノはイタリア映画発祥の地だそうで、立派な国立の映画博物館モーレ・アントネッリアーナ(日本のフィルムセンターとは大違い)がある。本作はこの映画博物館を舞台にしたファンタジーである。
 マルティーノ(ジョルジョ・バゾッティ)は映画博物館に住みこんで夜警をしている孤独な青年で、深夜、好きなフィルムを勝手に上映したり、倉庫にしまわれている古いカメラを修理して、無声映画風の映画を撮るのが生き甲斐だ。
 ある夜、ハンバーガー・ショップで夜勤をしているアマンダ(フランチェスカ・イナウディ)が上司に火傷をさせて逃げてきて、マルティーノは彼女を映画博物館に匿う。マルティーノは秘かに彼女にあこがれ、隠し撮りしていた。彼は林檎が好物なのに、彼女に会いたいばかりに、毎晩、ハンバーガーを買いに彼女のつとめる店に寄っていた。
 彼女は映画博物館で楽しい日々をすごすが、博物館の外はで警察が彼女の部屋を家宅捜査に来たり、包囲網がじわじわと迫る。
 彼女にはアンジェロ(ファビオ・トロイアーノ)という恋人がいた。アンジェロは自動車泥棒団のボスだったが、アマンダを救うために子分を使って上司を脅し、告訴をとりさげさせる。
 アマンダはやっと自由の身になり、映画博物館を出て部屋にもどるが、彼女はマルティーノを愛しはじめていた。三人の関係はどうなるのか。
 愛すべき小品だが、ちょっと都合がよすぎるところがあって、願望充足映画の臭みがつきまとう。映画への愛を口にすれば許されるとでも思っているのだろうか。