「鉄コン筋クリート」
「ピンポン」の原作者でもある松本大洋が、バブル崩壊直後に連載した漫画のアニメ化である。スタッフと声優の顔ぶれがすごい。出来もすばらしい。よくぞここまで描きこんだものだ。
しかし、今一つ面白くない。技術的にはすごいと思うが、昭和レトロをもとに生活感を強調しているのに、街にリアリティがないのだ。ストーリー展開はもったいつけすぎで、もっさりしている。
再開発から街を守るためにアウトローの少年たちが戦うというストーリーだが、街の住民を置いてきぼりにしてしまっているのである。抽象的な「街」概念をネタにアクションをやっているだけという印象なのだ。
街を愛したがために組織を裏切って殺されるネズミというヤクザが出てくるが、要となるキャラクターのはずなのに存在感ゼロ。上っ面のカッコウだけつけて死んでいくが、「街」にリアリティがないのだから、いくら田中泯を声優に使っても駄目である。