2007年6月20日水曜日

「あるスキャンダルの覚え書き」

 ゾーイ・ヘラーの小説の映画化で、ジュディ・デンチとケイト・ブランシェットという二大オスカー女優が競演している。
 デンチは「アイリス」ではケイト・ウィンスレットを横綱相撲で一蹴したが、ケイト・ブランシェットはデンチに跳ね飛ばされながらも、土俵際ぎりぎりで踏みとどまっている。同じケイトでも、ブランシェットの方が粘り腰だ。
 デンチ演じるバーバラはオールドミスの歴史教師で、学校のヌシ的存在だ。バーバラの勤務する学校は労働者階級が多いが、場違いのようなブルジョワ夫人のシーバが美術教師として赴任してくる。シーバの美貌と華やかな雰囲気に教員も生徒も魅了され、彼女の話題でもちきりになる。
 シーバは子供が手を離れてから教員になったので、生徒たちが荒れだすとなすすべがない。バーバラが教室の騒ぎをおさめてやったことから、二人は急速に親しくなる。バーバラはシーバの夫が大学時代の恩師で、20歳以上も年が離れている老人であること、息子がダウン症で、気分転換のために教職を希望したことを知り、日記帳に書きつける。
 クリスマスの行事のあった日、バーバラはシーバが15歳の教え子と美術室で関係をもっていることを見てしまう。シーバは誰にも言わないでくれと懇願する。バーバラは秘密を守る代わりに、シーバを自分の思い通りに操縦しようとする。
 ここからが凄い。猫が鼠をいたぶるように、猫しか生き甲斐のない労働者階級出身の寂しく醜い老嬢が、ブルジョワ階級出身の夫と子供のいる美しい夫人をいいように振りまわし、その経過を日記に事細かに書きつけていくのだ。
 後半、事態は急展開し、最後まではらはらする。見るべし。