「魂萌え!」
桐野夏生のベストセラー小説の映画化。
定年三年目に夫(寺尾聰)が急死し、取り残された敏子(風吹ジュン)がいやもおうもなく自立するまでを描くオバサン・オデッセイである。
カプセル・ホテルで身の上話を押し売りする老婆(加藤治子)や、その情けない甥(豊川悦司)、一見やさしげな老年プレイボーイ(林隆三)、彼女より年上なのに夫が浮気相手に選んだ初老の女(三田佳子)等々、化物のような人物が次々と登場し、敏子を翻弄する。高校以来のつきあいの同級生(藤田弓子、由紀さおり、今陽子)や、アメリカ帰りの息子(田中哲司)、男と同棲をはじめる娘(常盤貴子)も化物であったことがわかる。
ずっと家庭にいて、世間知らずになっていた敏子はそうした化物たちとぶつかりながら、すこしづつ成長していく。敏子の足どりはあぶなっかしく、はらはらしながら見た。
敏子を演じる風吹ジュンは最初はさえないオバサンだったが、どんどんきれいになっていく。そして、かわいい。風吹ジュンは本当にいい女優になった。