江戸川乱歩、羌族
NHKの「その時歴史が動いた」が「日本ミステリー誕生 」として江戸川乱歩をとりあげた。乱歩はわがワセダ・ミステリ・クラブの創立時の特別顧問である。
特に目新しい話はなかったが、乱歩が「屋根裏の散歩者」を書いた頃住んでいた家が出てきた。乱歩が実際に上ったという屋根裏までカメラがはいっていて、おおっと思った。
ゲストとして森村誠一氏が出演していたが、戦後の乱歩が創作より探偵小説振興に向かい、新人育成や推理作家協会に尽力した理由を、商店街振興に喩えていたのは言い得て妙だった。
小説は個人が孤立して書くものだと思われているが、作家が一人で頑張っても読者は広がらない。商店街のようにさまざまな個性をもった作家がたくさんでてくることで、より多くの読者が集まるというのだ。
エンターテイメントはもちろん、純文学でもそういう面はある。文芸誌は商店街というかショッピング・モール的な役割をはたしている。
書き下ろしでいい作品が出てくれば文芸誌はいらないという人がいるが、そんなことになったら読者は確実に減るだろう。文学に関心を持ちつづけてくれる読者層を維持するためにも、文芸誌は必要なのだ。
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NHKの「探検ロマン世界遺産」の「殷墟」を再放送で見た。
甲骨文字をもうちょっと取りあげてほしかったとは思うが、この番組の一番の見どころは羌族の末裔の住む村をカメラにおさめたことだ。あの羌族が現代まで生きのびていたのである。
羌族は史書には野蛮人のように書かれているが、実際は被害者で、殷などは生贄にするために定期的に羌族狩りをおこなっていた。
羌族は中原を追われ、山奥でひっそりと生きのびていた。伝統の白い頭巾をかぶり、太鼓にあわせて民俗舞踊を踊っていたが、ちょっと感動した。