2007年6月13日水曜日

「浮雲」

 林芙美子後期の傑作の成瀬巳喜男監督による映画化である。
 成瀬の代表作とされていて、前から見たかったが、期待が大きすぎたようである。
 日本軍占領下のインドシナに赴任したタイピストの幸田ゆき子(高峰秀子)は農業技官の冨岡(森雅之)と出会い、不倫関係になる。敗戦後、引きあげてきたゆき子は冨岡の家を訪ね、関係を復活させるが、そこから二人の転落がはじまる。
 リアルに再現した焼け跡闇市時代で陰々滅々たるドラマが展開するわけだが、高峰のゆき子には原作のような生命感が乏しく、愚痴っぽい女になってしまった。森の冨岡はいいのだが、冨岡はもともと受け身の役なので、ゆき子の物足りなさをカバーすることはできない。よくできてはいるが、原作を一回りか二回り小さくしてしまったように感じた。