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2008年4月10日木曜日

「中国」の実態を告発する国民集会

 宮崎正弘氏のメールマガジンで知った「「中国」の実態を告発する国民集会」(豊島公会堂)に行ってきた。右も左も、政治集会という集まりは初めてだったが、いろいろな意味でおもしろかった。

 雨だったが、一階は早々と満席で、二階にも人をいれていた。700人という主催者側発表はほぼ実数だろう。雨が降らなかったら、会場にはいりきらなかったかもしれない。

 まず国歌斉唱、つづいてラサ騒乱で亡くなった人たちに黙祷をささげる。正面の日の丸といい、司会の太った人といい、なんとも香ばしい。政治集会に来たんだなあと実感する。

 まず、この集会の発起人である政治評論家の加瀬秀明氏。今日はダライ・ラマ法王が日本にトランジットで立ち寄り、記者会見を開くという絶妙のタイミングだったが、加瀬氏によればまったくの偶然だという。開催を決め、会場を押さえたのは昨年11月。毒餃子事件やチベット騒乱が起こるなどと予想した人はいず、人が集まるか懸念したとのこと。すごい偶然である。

 さらに加瀬氏はオリンピックを開いた独裁国家は9年後に崩壊するというジンクスがあり、中国も1917年に崩壊するかもしれないと指摘。場内爆笑。

 このジンクス、笑いごとではない。ナチス・ドイツは1936年にベルリンでオリンピックを開いたが、9年後の1945年に崩壊。ソ連は1980年にモスクワでオリンピックを開くが、やはり9年後の1989年に崩壊。ナチスはともかく、1980年時点でソ連の崩壊を予測したのは小室直樹氏くらいだった。2017年の中国崩壊だって、ないとは言えまい。

 次いで登壇したのは中国食品の危険性を指摘しつづけてきた上海出身の陳惠運氏陳。陳氏には『中国食材調査』などの著書があるが、昨年、アメリカやヨーロッパ、南米で中国食品や薬品の事故がおこるまでは、マスコミからはトンデモ本あつかいされてきたという。中国礼賛論がはびこる状況ではそうだったろう。

 陳氏は中国毒菜の危険にもっともさらされているのは中国自身だと指摘。大地と水と大気が汚染されているので、特別な無農薬農場の作物を食べ、最高の医療を受けているはずの中国共産党常務委員クラスでも癌が多発しているという。

 中国政府はオリンピックがあるので工場を北京から移転させるとか環境に配慮しはじめたが、終わったら元にもどるので、毎年オリンピックを開いてほしいと語っていた。

 三番目は民主党代議士の西村慎悟氏。ファンが多いらしく、ひときわ大きな拍手でむかえられる。

 この人の演説は迫力がある。台湾と朝鮮半島が中国に呑みこまれ、日本は太平洋の端で孤立すると警鐘を鳴らすが、聞いているだけでアドレナリン濃度が高くなる。

 台湾の馬九英政権が国共合作に踏み切ったら、アメリカが手塩にかけて育てた台湾の軍事力が日本のシーレーンに向かって牙を剥くというのだが、南京「大虐殺」をフレームアップしたのはそもそもは国民党だっただけに、ありえない話ではない。。

 朝鮮半島に対する指摘も説得力がある。李明博大統領は保守派ということになっているが、損得を第一にする企業人である以上、北朝鮮が崩壊したら多大の経済負担のかかるドイツ型の統一は選ばず、国連統治にゆだねる可能性が高い。国連統治とは実質的には中国統治であり、韓国もまた中国の影響下に置かれる。38度線は対馬海峡まで下がってくるというわけだ。

 北朝鮮はすでに人民元経済圏に組みこまれており、早晩中国に呑みこまれるだろう。問題はそうなった場合の韓国のナショナリズムだ。千年以上事大主義をつづけたきた民族だけに、あっさり中国に飲みこまれてしまうかもしれない。


ペマ氏とチベットの雪山獅子旗。


 四番目は本日の主役というべきペマ・ギャルポ氏。日の丸に一礼した後、雪山獅子旗の横でチベットの窮状を明解な言葉で訴えた。この人の日本語は完璧で風格がある。

 五番目は成田のダライ・ラマ法王会見から駆けつけた西村幸祐氏。会見には内外の記者100人以上が集まったという。

 西村氏は重要な指摘をした。ダライ・ラマ法王は中国の侵略主義を批判した後、「この問題はアジアの他の地域にも波及する」と締めくくったが、通訳の女性はこの肝腎な条をスルーしてしまったというのだ。危機感がないのか、それとも中国に遠慮したのか。ちゃんと訳したとしても、マスコミが伝えるかどうかは疑問だが。

 六番目は亡命中国人で中國民主運動海外聯席會議代表の相林氏。最初に中国人としてペマ氏をはじめとするチベットの方々の謝罪したいと述べてから、中国民主化運動の現状を語った。

 七番目は中国民族問題研究会の殿岡昭郎氏。東トルキスタン(新疆ウィグル自治区)と南モンゴル(内蒙古自治区)の代表者と夫々の国旗を紹介した後、中国勢力が政界・財界・官界・言論界の内側深く入りこんだ現状を打開するには、チベットや東トルキスタン、南モンゴルの人々と連帯して中国を背後から揺さぶるしかないという危ない内容。趣旨はわかるが、明石大佐級の人がふたたびあらわれないと無理だろう。


左が東トルキスタン旗、
右が南モンゴル旗。



 八番目は民主党都議会議員の吉田康一郎氏。民主党ということで最初、会場との間に隙間があったが、高校時代に朝日新聞に電凸した体験を話しだすと距離が一気に縮まり、同志という感じになった。これが政治集会というものか。

 さて、宮崎正弘氏である。メルマガが面白いので一度話を聞いてみたいと思っていた。

 宮崎氏は中村伸郎を皮肉っぽくした感じの飄々とした爺さんだった。辺境地帯まで取材の足を伸ばすのだから、もうすこし若い人を想像していた。中国の繁栄は偽装であり、バブル崩壊はオリンピック前からはじまっているという趣旨の話でメルマガの内容と重なっていたが、冗談のような本当の話を次々と披露して、爆笑また爆笑。期待通りだった。

 トリは保守派の論客の大原康男氏。まとめと、皇太子殿下のオリンピック開会式出席はまだ完全につぶれたわけではなく、注意が必要という趣旨だったが、話がくどい。それまでの登壇者は短い持ち時間の中で内容を凝縮して語っていただけに、よけい冗長に感じられた。半分の時間でまとめるべきだ。

 プログラムはこれで終わりだったが、最後にエプロンデモ実行委員会代表の岡本明子氏が決議文を読み上げ、拍手で了承するという儀式があった。はじめて出たのでよくわからないが、政治集会とはこういものなのかもしれない。

 左翼の集会は20年ほど前から2~30人がせいぜいで、100人以上集めるのは至難と聞いたが、保守系は軽く数百人は集まるわけである。ところが、取材にきたのはチャンネル桜くらいのようである。左翼の集会なら数十人規模でも新聞でとりあげるが、団塊世代がトップにいる間はこうした変更がつづくのだろう。

2008年3月12日水曜日

アメーバー化する人権擁護法案

 人権擁護法案が15日にも提出されるという。もともとは行政機関による人権侵害を防ぐための法案だったが、途中から国民全体を取り締まる法案にすり変わり、人権擁護委員会という機関にほとんど制約のない捜査権をあたえている。

 人権擁護委員会は警察よりも強力である。警察は法務大臣の指揮下にあり、家宅捜索をおこなうには裁判所から令状をもらう必要があるが、人権擁護委員会は形式的には法務大臣の管轄下にあるものの、独立して職務をおこなえることが明記されており、裁判所の令状なしに他人の家に立ち入り、関係書類を検査することができる。また、警察は管轄区域以外で捜査をおこなうことはできないが、人権擁護委員は自分が任命された市町村以外でも捜査等がおこなえる。

 差別かどうかを決定するのも裁判所ではなく、人権擁護委員会である。そもそも法案には差別の定義が明文化されていない。人権擁護委員会が差別と断定したら、反論の余地はなく、差別にされてしまうのだ。

 産經新聞の「人権擁護法案はポストモダン?推進役の東大教授に異論噴出」によると、自民党人権問題調査会が法案推進役である塩野宏「人権擁護推進審議会」元会長を呼んで質したところ、こう答えたというのである。

 塩野氏は「法案はポストモダン的なもの」で、人権委員会を「救済制度の至らないところにどこへでも足を伸ばすアメーバ的存在」とたとえ、法案の必要性を強調した。

 また、塩野氏は加害者として訴えられた人の救済措置が不十分との指摘には「救済制度をつくることはあまり念頭になかった」と不備を認めた。


 アメーバーとはよくぞ言ったものだ。まさに人権擁護委員会は不定形なアメーバーのように好きなところに義足を伸ばし、獲物をからめとってくることができるのである。

 しかし、こういう何でもありの権力をポストモダンと呼ぶのはおかしい。ポストモダンの不定形は相対主義に由来するが、人権擁護委員会の不定形は弱者の言い分を無条件に真実とする絶対主義にもとづく。弱者の言い分は絶対的に正しいから司法的判断を介在させる必要はなく、超法規的な無制約の権力を行使させてよいというわけだ。

 これでは冤罪だらけになりかねない。しかも、塩野氏は冤罪の救済措置は考えていなかったというのである。


 人権擁護委員会の委員には誰が選ばれるのだろうか。任命するのは市町村長だが、法案には「弁護士会及び都道府県人権擁護委員連合会の意見」を聴かなければならないと明記されている。選挙で選ばれた市町村長には委員を選ぶ権限がないのだ。委員の定数は人権擁護委員会自体が決定するから、お手盛りになりかねない。

 法案はまたいたるところで弁護士の関与を定めている。人権問題にかかわるとなるといわゆる「人権派」弁護士ばかりになってしまうだろう。「人権派」弁護士がいかに偏った考え方をする人種であるかはご存知の通りだ。人権擁護法案は世間から相手にされなくなっている「人権派」弁護士に水戸黄門の印籠をあたえる結果になるだろう。

 人権擁護委員会の委員になる資格は当初は「選挙権を有する者」とされていたが、途中から「住民」になっている。日本国籍がなくてもなれるのである。

 唖然とすることばかりなので、どうか一度法案を読んでほしい。こんな滅茶苦茶な法案が上程されようとしているなんて、自分の目で読まないとにわかには信じられないだろう。

 在日朝鮮人が市町村から根拠のない免税措置を受けていたとか、奈良で二年間出勤しない公務員がいたとか、弱者利権がようやく問題にされるようになったが、人権擁護法案が施行されたら、そうした事例を報道することは不可能になるだろう。取材途中でガサいれされたら、取材源を秘匿することはできなくなる。北朝鮮による拉致問題の追求だって、人権擁護法案があったら、途中で闇に葬られただろう。ようやくジャーナリズムのメスがはいりかけた弱者利権が、再び巨大なタブーになってしまうのである。悪徳政治家が利権を隠蔽するために、弱者利権を利用することだって考えられる。自民党内の推進派はそれを狙っているのではないか。

 これだけ危険な法案なのに、なぜ大半のマスコミは避けるのか。そして、自民党の一部議員と共産党以外の国会議員はなぜ黙過しようとしているのか。どうか多くの人がこの問題に関心をもってもらいたい。

2008年1月21日月曜日

北朝鮮はチベット化するだろう

 北朝鮮有事の際、中国が北朝鮮に軍の派遣を検討していることが中国人民解放軍内部で検討されているという記事が読売に出た。


 中国軍の北朝鮮進駐の可能性は本欄でたびたび指摘してきたし、最近も米国戦略問題研究所(CSIS)と平和研究所(USIP)が共同で同趣旨の報告書を発表したことが報じられたが(朝鮮日報)、人民解放軍内部の話となると穏やかではない。北京オリンピック後を見すえた動きが表面化しつつあるのかもしれない。

 興味深いのは中国軍の越境は「国連安全保障理事会の承認が原則的には前提になるとしているが、難民流入が一刻の猶予も許さない場合は、中国が独自判断で派遣する」としている点だ。中国は旧ソ連のアフガン侵攻と違って、国際社会、特にアメリカが北朝鮮進駐を容認すると踏んでいるのだ。

 金正日が本当に核を放棄するとは思えない。北朝鮮の核問題を抜本的に解決するには韓国が北朝鮮を吸収するか、中国が保護国にするかのどちらかしかない。北朝鮮はすでに人民元経済圏にとりこまれており、中国軍がはいって核の後始末をし、親中政権を作るぐらいは朝飯前だ。その先にあるのは北朝鮮のチベット化である。北朝鮮復興には莫大な資金がかかるといわれているが、それは自国民と同じようにあつかう場合だ。保護国なら本当に復興させる必要はなく、朝鮮人人口が減っていくのを待てばいい。

 韓国の最大の貿易相手国は中国になっている。北朝鮮に中国軍がはいっても韓国には何もできないだろう。中国化した北朝鮮と統一することによって、朝鮮半島は再び中国に呑みこまれていくしかない。

 十数年後の日本は台湾的な立場に追いこまれているかもしれない。

2008年1月6日日曜日

キッシンジャーの年頭予測

 「日高義樹ワシントン・リポート」で新春恒例の「キッシンジャー博士の十の予測」をやっていた。例年たいしたことは言わないが、今年は中国関係の楽観的な見通しが目についた。北京五輪後のバブル崩壊はなく、民族主義の暴発もないと断言したのである。

 ロシアに対しても好意的な見方をしていた。プーチンは新たなナショナル・アイデンティティをロシア国民にあたえようとしているだけで、第二の冷戦をはじめるつもりはない。ロシアは石油を武器に使っているが、それは産油国ならどこでもやっていることだ。石油はいつかは売らなければならないし、買い手に信頼されるためには安定供給をせざるをえないというわけだ。

 ロシア擁護論には一応説得力があるが、中国楽観論の方は眉に唾をつけて聞いておいた方がいい。不動産バブルが膨らむところまで膨らんでいるし、サブプライム・ローン問題が長引いて国際金融が不安定になっている。地域格差や都市部の貧富の差が危機的なところまで広がっている。

 年末にNHKの「激流中国」をまとめて見たが、中国の庶民は無理をしてでも子供を大学にいかせれば、将来、必ず豊かになれるという幻想で耐えているようである。しかし大学出はもうだぶついているし、条件のいい仕事は共産党幹部の子弟でなければつくことができない。無理をして大学にいっても豊かになれないとわかったら、庶民の間にたまりにたまった不満はどうなるのか。もし景気が失速して失業者が街にあふれたら、キッシンジャーの楽観論とは裏腹に、中国は大変なことになるだろう。

 イラクについても楽観的な見方をしていた。ちょっと驚いたのはキッシンジャーも日高氏も昨年春の米軍増派が成功したという前提で話していることだった。日本のマスコミは自爆テロの激化ばかりを伝え、サイゴン陥落前夜のベトナムのような印象を作りあげているが、米軍増派で掃討が進みイラク軍に引き継ぐ体制が整いつつあるらしい。自爆テロが増えたのは自爆テロ以外の攻撃が出来なくなったからなのかもしれない。

 楽観論がつづく中、北朝鮮についてだけは厳しい見方をしていた。一応、北朝鮮が核兵器と核物質と核拡散をすべて申告し、破棄をはじめればライス訪朝もありうると語ったが、北朝鮮は今のところ約束を何も果たしていないし、またぞろ引き伸ばしをはかっている疑いがあると懸念を述べた。ブッシュ親書についても北朝鮮が約束を守るなら賢明な方策だったと言えるが、北朝鮮が親書の文言に安心し、自己正当化をするなら賢明ではなかったと突きはなしている。

 日高氏がキッシンジャーがかつて金正日の退陣以外に北朝鮮問題の解決はないと語った点をとりあげ、今も同じ考えかと訊いたところ、北朝鮮が核兵器を破棄したら金正日体制はもちこたえられない、アメリカが転覆させるまでもないと切って捨てていた。

 北朝鮮が韓国に侵攻する可能性については否定はしなかった。国家体制が崩壊しているので1950年のようなことはできないが、一週間かそこらローカルな騒動を起こすことはできるというわけだ。

 キッシンジャーは今年は大統領選挙があるので現状維持だと締めくくっていたが、北東アジアはあぶないかもしれない。

2007年8月24日金曜日

民衆の語る文革

 20日から23日まで、NHK総合で「民衆が語る中国・激動の時代~文化大革命を乗り越えて」を放映していた。
 文革については多くの本が出ているし、ドキュメンタリー番組もすくなからず製作されてきた。この番組は文革にかかわった、あるいは巻きこまれた40人以上の中国人に長時間のインタビューをおこない編集したもので、渦中にいた民衆みずからが語った点が新鮮である。40年たって、ようやくこういう番組が作れるようになったということだろう。
 第1回は文革の発動から高揚期、第2回は激化する武闘と林彪事件、第3回は下放政策、第4回は文革の終焉がテーマだった。
 最初の2回はみな妙に楽しそうに思い出を語っていた。元紅衛兵がなつかしむのはわかるが、被害にあった人まで熱っぽく語るのだ。ひどい話がたくさん語られたが、それでも彼らにとっては青春だったということだろう。
 ところが第3回で下放の話になると、みな一様に口調が重くなり、表情が曇る。文革の熱狂は一過性だったが、下放は都市戸籍を失うことであり、その後の一生を決定したからだ。
 最初は幹部の子供も平等に下放されていたが、文革が一段落するとすぐに都市にもどれた。しかし、コネがないと地方に埋もれることになった。出身が悪いと、いくら頑張って村で推薦されても、都市にもどるのは不可能だったという。多くの人にとって、下放は終わっていない。
 意外だったのは林彪事件の評価だ。毛主席の「もっとも忠実な戦友」にして後継者が、一夜にして売国奴になったという異常事態を国民に納得させるために、林彪直筆の「五七一工程」に関するメモを公開したが、そこに書かれている毛沢東批判と文革批判を読み、本当のことが書いてあると直感したと異口同音に語っていた。自分の頭で考えはじめるきっかけになったと証言する人が何人もいた。表向きは「批林批孔」を叫んでいても、本心は別だったわけだ。

2007年8月21日火曜日

中国の太平洋分割案

 共同電が「中国、太平洋の東西分割提案か」という物騒な記事を配信した。最近、訪中したキーティング米太平洋軍司令官に中国側が「太平洋を東西に分割し東側を米国、西側を中国が管理する」ことを提案したというのだ。
 分割線がどこかは書いていないが、グアムになるにせよ、ハワイになるにせよ、日本が中国側管理区域にとりのこされることになる。見逃せないのは次の一節だ。

 米政府内の親中派の間では提案に前向きな受け止めもあったが、国防当局は西太平洋の覇権を中国に譲り渡す「大きな過ち」だと主張。日本などアジアの同盟国との関係を台無しにしかねないとして断ったという。


 アメリカは今は断っても、将来どうなるかわかったものではない。防衛を他国に頼ることの危うさに目を向けるべきだ。
 中国が軍事力を増強しつづけるのは間違いないが、ただし「中国、自動車生産2010年に日米を逆転も・1600万台計画」というような中国経済脅威論には眉に唾をつけた方がいい。
 宮崎正弘氏は「中国の成長率が10-11%とは「真っ赤な嘘だ」でレスター・ソローの推計を紹介し、電力消費と購買力平価からいって 4%の成長も怪しいと指摘している。
 中国は独裁体制なのをいいことに、無理に無理を重ねていると見た方がいい。そして、だからこそ危険である。経済破綻が生じた場合、軍事的緊張で国内の不満をそらすのが独裁体制の常套手段だからだ。

2007年8月1日水曜日

従軍慰安婦問題とマルクス・ゾンビ

 7月30日、アメリカ下院本会議でいわゆる従軍慰安婦に関する「対日謝罪要求決議案」が可決された。
 この問題は池田信夫氏が簡潔に指摘しているように朝日新聞の誤報にはじまる「存在しない問題」であって、河野洋平官房長官(当時)がその場しのぎの対応をしたために、「存在しない問題」が一人歩きするようになってしまった。マイク・ホンダ議員は従軍慰安婦の根拠を問われると河野談話を持ちだしており、日本流のその場しのぎの対応が国際的にどんな禍根を残すかという実例になった。
 河野氏の責任は重大だが、当時の雰囲気を知る者としては左翼団体が組織防衛のために利用していたことを指摘しておきたい。
 朝日新聞の誤報が出た1992年はベルリンの壁崩壊の2年半後のことであり、左翼団体が一番意気消沈していた時期だった。モスクワの秘密文書館の封印が解かれ、隠されていたおぞましい事実が次から次へと出てきた。加藤昭氏らの努力によって日本の共産主義運動の暗部も暴かれていった。日本共産党の象徴だった野坂参三氏が二重スパイだったことが判明し、除名されたのは1992年の末だった。あの頃は日本共産党だけではなく、左翼全体が出口なしの状況におちいっていた。「シャミン」(社会民主主義)が侮蔑語だったことからもわかるように、日本の左翼はマルクス主義一辺倒だったために、マルクス主義がこけると左翼全体がこけてしまったのだ。
 ベルリンの壁崩壊以前からマルクス主義者は未来を語れなくなっていたが、モスクワの秘密文書館が解放されたために、過去も語れなくなってしまった。
 その中で飛びだしたのが朝日新聞の誤報であり、それを機に左翼団体は息を吹きかえし、従軍慰安婦問題をおしたてて運動を再組織した。
 これはマルクス信仰を失ったマルクス主義者に特有の反応パターンだ。
 北朝鮮は日本人拉致という犯罪行為を相殺するために、脱北した日本人妻を呼びもどし、日本が北朝鮮公民を拉致したとしてプロパガンダに利用した。中国は中国製品の欠陥を外国から指摘されると、その国から輸入している製品に難癖をつけ、輸入禁止にするという対抗措置をくりかえしている。彼らはもうマルクス主義を信じていないので、相手の真似をするしか方法がないのである。
 従軍慰安婦問題や強制連行問題では日本の左翼団体は学問的にとっくに否定されている材料に固着しているが、彼らはマルクス・ゾンビであり、組織防衛のためにはそうするしかないのだということを理解しておく必要がある。

2007年6月9日土曜日

李登輝氏の靖国参拝

 台湾の李登輝前総統が7日、実兄の李登欽氏が合祀されている靖国神社を参拝された。李登欽氏は陸軍特別志願兵として出征し、昭和20年2月15日、ルソン島で戦死されたという(SankeiWeb)。
 マスコミは中国外務部の不満会見をメインに、李氏の参拝が日本にとってさも迷惑なことのように伝えたところが多かったが、ネットのおかげで当日の靖国神社の模様を知ることができる(東アジア黙示録)。
 また、1日におこなわれた後藤新平賞受賞記念スピーチは宮崎正弘氏のレポート2007年6月1日で、7日におこなわれた「2007年とその後の世界情勢」という講演の要旨は宮崎正弘レポート2007年6月8日と大紀元で読むことができる。9日には日本外国特派員協会の講演で「靖国問題は中韓が作り上げたもの」と明言されたとのこと(大紀元)。
 「2007年とその後の世界情勢」という講演は示唆に富む。イラク失敗によるアメリカの影響力低下は新政権が軌道に乗る2009年までつづき、その空隙をついてロシアが失地回復をはかり、ベネズエラなど反米勢力が挑発的な行動に出ている。
 東アジアでも2009年までアメリカの影響力の低下した状態がつづく。2007年は主要国が内部固めに忙しいので平穏だろうが、2008年には日中の対立が表面化すると指摘している。
 中国は地域間格差や農民暴動、バブル崩壊の危機という国内問題から国民の目をそらすために、対外緊張を演出せざるをえない。日本はアメリカの援助がえられないまま、中国の圧力に立ち向かわなければならないことを覚悟しておく必要がある。
 中国経済が危ないという話は日本のマスコミもとりあげはじめているが、李氏はきわめて厳しい見通しを披瀝された。宮崎レポート2007年6月8日から引く。


 中国の問題は国内金融である。GDPの40-60%もの不良債権。これは96年の台湾における金融危機、97年からのアジア通貨危機を上回る規模の危険性を示してあまりあるもので、いずれ爆発は回避できまい。
 いまの中国経済は輸出拡大志向だが、利益の殆ど無い輸出に依存せざるを得ないのは、キャッシュ・フローの維持にこそ、その目標があるからだ。しかしこの経済金融政策は失敗している。輸出一途の拡大路線は、健全な経済運営とはいえず、むしろ問題を悪化させている。

 中国投資をあおる人たちは、EUが投資を拡大しているからまだ大丈夫だとか、グリーンスパン発言でも株価下落は一時的だったと言っているが、EUは中国から遠いし、グリーンスパン発言後の株価回復は一攫千金を夢見る中国人個人投資家が押し寄せた結果にすぎない(宮崎レポート2007年6月6日)。中国人個人投資家の平均株式保有期間は20日であり、投資というよりギャンブルである。1929年の大恐慌も、危ない危ないといわれながら、それまで株を買ったことのなかった庶民が怒濤のように株式市場に流れこみ、膨らみきったバブルをさらに支えつづける状況の中で起った。
 中国バブルがいずれはじけるが、その時は日本にも大波が押し寄せるだろう。まさかとは思うが、民主党政権だったらひどいことになる。