2007年6月19日火曜日

プロバイダ責任制限法で懇談

 ペンクラブの旧電子メディア委員会と電子文藝館で総務省にいき、いわゆる「プロバイダ責任制限法」の担当者と懇談してきた。blogに書いていいという許可をもらうのを失念したので、官名はさしひかえておく。
 「プロバイダ責任制限法」は正式名称を「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」といい、対象となる「特定電気通信役務提供者」とは「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信」を提供する者をさし、掲示板やWikiツールの管理者、コメント欄を許可しているblogのオーナーなども含まれる。
 この法律は有害情報の削除と、有害情報発信者の情報開示という二本の柱からできているが、個人情報の開示については慎重な対応をもとめているのに対し、有害情報については積極的に削除を誘導する内容になっている。思い切り単純化していうと、個人情報の開示請求は裁判所の令状が来るまで応じなくても大丈夫だが、有害情報の削除を遅らせると責任が問われる可能性がある。条文の上では義務とはされていないが、限りなく義務に近いのである。
 削除の条件は二つある。まず、公開されている書きこみやファイルが明らかに他人の権利を侵害していると信じるにたる材料があること。次に発信者に警告したのに、7日以内に反論がないこと。警告は現在のところ、ほとんどメールでおこなわれているようである。
 しかし、SPAMが横行する現在、メールは確実な連絡手段とはいえなくなっている。海外に出ていたり、病院に入院してメールをチェックできないというケースもあるだろう。そもそも他人の権利を侵害しているかについては微妙なケースがすくなくない。「著作権関係ガイドライン」には一応こうある。


 可能な限り誤った措置が講じられることのないよう、また、ガイドラインの信頼性担保のために、権利侵害があることを容易に判断できるものを対象とすることが好ましい。(下線、引用者)


 しかし、本当にこういう慎重な運用がおこなわれているだろうか。
 昨年、ペンクラブの会員のホームページが、プロバイダによってサイト全体が削除されるという事件が起きた。このケースはその後裁判になり、プロバイダに登録していたメールアドレスを定期的にチェックしていなかったのは原告側の過失とされ、プロバイダの削除は妥当という判決が出た。ただし、サイト全体を削除するのはゆきすぎであり、当該ページ以外のページは原状にもどすという条件がつけられた。ところがそのプロバイダはバックアップをとっておらず、原状回復ができなかったのである。
 こういう事例をお話したが、担当官は発信者側の声を聞くのははじめてということだった。
 目下、放送とインターネットを一元的に規制する「情報通信法」が準備されているが、この法律はすでに施行た実績のある「プロバイダ責任制限法」が雛形になるという見方が有力である。今の段階で発信者側が発言しておかないと、とりかえしがつかなくなるかもしれない。