2008年3月13日木曜日

NGOになったICPF

 ICPFシンポジュウム「情報通信政策の課題」を聴講してきた。今回はNGOとして再出発する記念ことだったが、どの話もおもしろかった。

 一人目は「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」のキーマンである中村伊知哉氏で、情報通信法について語った。

 情報通信法については昨年10月のICPFセミナーに総務省情報通信政局総合政策課長が登場したが、「世界最先端の制度」と自画自賛に終始し、はしゃぎすぎの印象を受けた。今回の中村伊知哉氏は役者が一枚も二枚も上で、できる人のようである。

 情報通信法が言論の自由を脅かすという議論は放送業界の目くらましにすぎないから、本丸であるインフラの問題に切りこむべきだという話を遠回しに語っていた。どこまで本気かわからないが、人が集まり経済が活性化するのなら、言論の自由、大いに結構ということらしい。

 二人目はこれまでICPFの代表だった池田信夫氏で、持論の電波利権について吠えた。内容はいつも通りだったが、民主党とからめて、2010年のアナログ停波は不可能と断言した。

 停波を強行したら、デジタルもアナログもわからない年金暮らしのお婆さんが、突然、TVを見られなくなってしまう。これこそ弱者切り捨てであり、自民党の脚を引っぱろうとあの手この手を試みている民主党が飛びつかないはずはないというわけだ。

 数字的に見ても、アナログのTVはまだ6000万台残っている。日本のTVの販売台数は年間1000万台で、これは買換需要にほぼ等しいという。単純計算でも、全部デジタル対応に置きかわるのに6年かかる計算だ(デジタル→デジタルの買換えもあるから、実際には10年以上かかるだろう)。2010年のアナログ停波など、最初から無理だったのである。

 池田氏の電波利権批判はまったくその通りだし、日本も電波のオークションをやるべきだと思うが、まあ無理だろう。

 質疑応答で、電波がコマ切れ状態で固定されているのは、古い技術でせこい商売をしている弱小業者が役所にびっしり貼りついているからだという指摘があった。高いところから説教しても効果はなく、弱小業者に数千億のビジネス・チャンスがあることを啓蒙するところからはじめないと、何も変わらないといういうわけだ。そうなればいいとは思うが、無理だろう。

 三人目は新しくICPF理事長に就任した林紘一郎氏。この人もすごい。NTT出身だそうだが、技術と法制度と文化の三つに通じていることが言葉のはしばしからうかがえる。オタク的な専門バカはうじゃうじゃいるが、久しぶりに本物の学者を見た。