2008年1月13日日曜日

NHKの新型インフルエンザ特番

 NHKは昨日と今日、二夜連続で新型インフルエンザの大流行パンデミックをテーマにした「最強ウィルス」を放映した。一夜目はシミュレーション・ドラマ「パンデミック・フルー~感染爆発」で、北朝鮮とおぼしい国で新型インフルエンザの大流行が起こり、舟で逃げてきた男から日本海岸の与田村という漁村で感染が拡がるという設定だった。

 政府には新型インフルエンザを想定した行動計画があったが、権限問題で小田原評定をつづけ、やっと村を封鎖したものの、時すでに遅く、産廃の不法投棄で村に来た青年が東京にもどってしまう。青年はワーキングプアで、健康保険がないために医者にかかれないままどんどん感染を広げていく。そして、首都圏で感染爆発がはじまる。

 感染が拡大しているのに、役人は小田原評定をつづけるだけに何もしない。WHOが最悪のフェイズ6を勧告し、首相が非常事態宣言をしてようやく動きだすが、もう手のほどこしようがない。物流が止まり、病院から医師が逃げだし、社会基盤が崩壊していく。

 低予算のドラマで迫力は今ひとつだったが、どれもありそうなことで見終わった後に不安がじわじわつのってくる。


 第二夜の「調査報告 新型インフルエンザの恐怖」はドキュメンタリで、こちらはドラマよりもはるかに怖かった。

 まず、インドネシアで起こった人=人感染の例を紹介したが、驚いたのは感染の疑いのある人間が二人も行方不明になっていたことだ。一人は感染者の家族で、民間療法家のところに逃げこんでいたのを発見されるが、病院に搬送中に新型インフルエンザで死亡する。もう一人は治療にあたった看護士で、こちらは従来型のインフルエンザだったが、もし新型インフルエンザに感染していたら、体内で従来型インフルエンザと遺伝子組み換えが起こり、より感染力の強い新型インフルエンザが誕生していた可能性があるという。

 死亡率60%で一般人がパニくるのはしょうがないが、医学知識を持っているはずの看護士が病院を逃げだすとはどういうことだろうか。途上国で新型インフルエンザが発生したら、衛生状態だけでなく社会的な要因によっても封じこめは無理だろう。

 次にアメリカの対策が紹介されたが、これは第一夜のドラマで描かれた無能な日本政府のすべて逆と言っていい。日本は二千万人分のワクチンを作る準備しかしていないが、アメリカは全国民のワクチンを新型ウィルス出現後半年以内に作る手配を終えている。ワクチンを射つ優先順位の議論も進んでいて、当初、連邦政府は高齢者を優先するとしていたが、国民からの声によって子供優先に転換したという。

 ドラマでは医師が専門外を理由にインフルエンザ患者の治療を拒否したり、病院から逃亡するエピソードが出てきたが、アメリカでは最悪1/3の医師が倒れることを想定して、歯科医師まで動員する体制が作られている。

 タミフルは新型インフルエンザに効くかどうかわからないし、効いたとしてもすぐに耐性ウィルスが出てくるだろう。最後は人工呼吸器で延命し、免疫が対応できるようになるのを待つしかない。

 新型インフルエンザでは人工呼吸器が生死を決めるのに、日本には日常業務に必要な数の人工呼吸器しかないそうである。ドラマでは人工呼吸器が足りなくなり、三浦友和演ずる熱血医師が妊婦を救うために末期ガン患者から呼吸器をはずす場面が出てきたが、実際にはそんなことはできないだろう。

 一方アメリカでは人工呼吸器の備蓄を進めており、さらに足りなくなった場合にそなえ、延命の望みのなくなった患者から人工呼吸器をはずし、生存の可能性のある患者にまわすことを定めた法律が作られている。戦争なれしていると言うか、効くかどうかわからないタミフルの備蓄だけで終わっている平和ボケ日本とは大変な違いだ。

 H5N1インフルエンザは以前は鳥の体温である41度でなければ増殖しなかったが、最近は人間の喉の温度である33度で増殖する株が発見されている。ウィルス側は着々と人類攻略の準備を進めているのである。暮には中国で人=人感染する鳥インフルエンザが発見されたという。

 15日と16日の深夜に再放送があるから、見ていない人は見ることをお勧めする。