2008年2月14日木曜日

タイタンと石油無機起源説

 Technobahnに「土星の衛星「タイタン」は地球の石油埋蔵量を上回るエネルギー資源の宝庫」という記事がのっている。タイタンの表面にメタンやエタンの湖があることが確認されたというのだが、いくら厖大に存在しても地球に運んでこれるはずはなく、絵に描いた餅である。

 しかし、この発見は別の意味で重要だ。石油の無機起源説の傍証となるからである。

 石油は太古のプランクトンが地中に埋まり、高熱と高圧で液化したものだと考えられているが、それとは別に、地球形成の際に取りこまれた星間ガスが起源だという説もある。これを石油無機起源説という。

 トンデモ学説のように思うかもしれないが、石油無機起源説は19世紀には有機起源説とならぶ学説としてまじめに議論されていた。20世紀になり、石油から生物の痕跡が発見されると、西側世界では下火になったが、ロシアでは有力な仮説として着々と研究が進められ、古細菌と地底生物圏の発見以降、世界的に見直されつつあるという。詳しくはトーマス・ゴールドの『未知なる地底高熱生物圏』と『地底深層ガス』を読んでほしい。ロバート・アーリックの『トンデモ科学の見破りかた -もしかしたら本当かもしれない9つの奇説』にも、一章をさいて肯定的に紹介されている。

 ただ、無機起源説が正しく、石油が無尽蔵にあったとしても、手放しではよろこべない。二酸化炭素が温暖化の原因かどうかは置くとしても、二酸化炭素よりもはるかに温室効果の高いメタンが厖大に存在することになるからである。無機起源説が正しいとしたら、温暖化は防ぎようがない。どうあがいても無駄である。